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「法然(浄土宗)」

2020.10.15

今日の松江は雲の多い朝を迎えています。いよいよ秋の深まりを感じるようになりましたね。★現在、私たちの周囲には鎌倉時代に成立した宗派の寺院が多く存在しています。そのいくつかの成り立ちを振り返ってみたいと思います。それまでの仏教は国家を鎮め護ることを目的とし、また貴族が信仰するというものでしたが、鎌倉時代になると民衆を救うことを目的とした仏教が広がりを見せました。そこには災害や飢饉、疫病などが流行した「末法の世」が背景にあったと考えられています。それまでの仏教は厳しい修行を乗り越えた修行者だけのものでしたが、浄土宗の開祖である法然(1133年~1212年)は貧しい人、愚かな人、悪人、武士、農民などすべての人々が念仏を唱えることによって救われる「専修念仏」の教えを説きました。また、女性を救済から閉め出していた既存の仏教を批判し、説法の座を女性にも開放しています。しかし、法然の活動はこれまでの仏教を脅かすとして鎌倉幕府や朝廷から弾圧を受け、1206年に法然と弟子の親鸞ら8名は流罪となりました。1211年、法然は流罪を許されますが翌年の1212年に80歳で死去。弟子の源智が大谷の地に法然の遺骨納め、のちに知恩院を再興。これが鎌倉仏教のひとつである「浄土宗」の始まりとされています。また、江戸時代になると徳川家康が浄土宗に帰依していたことから手厚い保護を受け、現在は浄土宗総本山知恩院の本堂、三門などの多くが国宝に指定されています。★朝晩は冷え込む日もありそうです。風邪など引かぬよう留意したいですね。

「経机」

2020.10.05

今日の松江は雲の多い朝を迎えました。時折小雨も降っているようですが、日中には回復する予報になりました。★朝夕には涼しい風も吹いて、日増しに秋の深まりを感じるようになりました。先週からは穏やかな天気が続いていたこともあり、10月1日の「十五夜」には夜空に明るく澄んだ月を眺めることができました。「お月見」は平安時代に中国から伝わった文化で、当時は貴族たちが水面や盃に映った月を眺めて詩歌を詠んだとか。このお月見が庶民の間に広まったのは江戸時代からだそうで、のちに月見団子などをお供えして収穫に感謝し、翌年の豊作を祈る行事として定着したようです。秋の季節にふさわしい日本らしい風情ですね。★秋風が吹くようになってからは工房での作業も窓を開け放って進めています。画像は黒塗り経机の修理中のものです。永年の間の傷みが目立つようになり、修理でお預かりしました。経机は経本や経典を載せる机のことを言いますが、在家では香炉やおリンを置いて用いることもあります。鳩摩羅什(344年~413年)の訳した旧訳の「仁王般若波羅蜜経」には「七宝の案(机)を作って、経をもって上に置き・・」という記述があることから「経机」は4世紀頃には大切な仏具として扱われていたと考えられています。★今週は秋晴れの日も多く、穏やかな一週間になりそうです。/昼前のニュースで台風14号発生の報道がありました。週末は注意が必要になるかもしれませんね。

「長月」

2020.09.25

松江は小雨模様の雲の多い朝を迎えています。秋らしくなって何をするにも適した穏やかな気候になりましたね。★秋といえば芸術の秋、読書の秋、スポーツの秋、そして食欲の秋。秋の旬で気になるのがサンマでしょうか。もともと庶民の食卓に浸透しているサンマですが、このところの不漁で随分と高価な魚になっているとか。今年も新鮮なサンマは食卓から遠のきそうですが、ほかにも秋の味覚は沢山ありますのでしっかり栄養を摂って夏の疲れを癒したいものです。★仏教では戒律に基づいて肉や魚を使わない「精進料理」を作りますが、仏前にお供えするお膳もこれに倣います。ただ、この精進料理は古い仏典などで明文化されたものではなく、長い歴史の中で発展し、成立したものだそうです。お釈迦様は出家し、断食などの難行苦行を重ねても心の平安を得ることはできなかったことから、享楽的な生活でも、対極の難行苦行の生活でもなく、どちらにも偏らない「中道」こそがあるべき姿だと説かれました。そしてお釈迦様自身も極端な菜食主義者ではなく、肉や魚も食べていたそうです。これは托鉢などの施しで頂いたものをより好みせず、ありがたく食べるという自然な食事だったそうで、肉や魚だけでなく野菜などもその命を頂いて生かされていることから「感謝して食べる」という姿だったようです。★明日までは不安定な天気になりそうですが、週明けからは秋晴れのいい気候になる予報になりました。

「無財の七施」

2020.09.15

暑かった夏も過ぎて、台風の後は秋の訪れを感じるようになりましたね。堀川沿いでも朝晩は冷たい風が吹くようになっています。★週末は秋のお彼岸の入り。お彼岸にはご先祖を敬い感謝するとともに、六波羅蜜(布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧)の徳目を実践する期間と言われています。慌ただしい日常に追われていると、なかなか思うように行きませんね。一番目の「布施」とは、「見返りを求めない施し」という意味ですが、必ずしも物やお金を捧げることばかりではなく、普段の生活の中での行いも「布施」であるとされています。「雑宝蔵経」の中には財力や智慧が無くても七つの施しができる「無財の七施」が説かれています。これは、一、眼施(慈しみの眼、優しい瞳で接すること)二、和顔施(穏やかな顔、笑顔で接すること)三、言辞施(愛情のある言葉、思いやりのある言葉で接すること)四、身施(自分の身体で奉仕し、身をもって快く行動すること)五、心施(他のために心を配り、共に喜び、共に悲しみ寄り添う心を持つこと)六、床座施(席を設けたり、席を快く譲ること)七、房舎施(雨風をしのぐ場所を与えること)の七施としています。お彼岸だけでなく、普段から心掛けたい行いですね。★明日までは穏やかな秋晴れになりそうです。松江では週の後半からは雨模様になる予報になりました。