「漢字」
2025.06.20

今週は盆提灯の展示もできあがり、やり残した業務に集中しています。普段の仕事では墨で文字を書いたり、彫刻したり、あるいは特殊な技法で金色文字を書いたりします。それぞれ用いる道具は異なっており、彫刻の場合は朱色の墨と小刀、金色文字の場合は漆と金粉、墨書きの場合は黒墨を用います。画像は研ぎ上げる前の小刀で、彫刻には欠かせない道具の一つですね。★私たちはおもに「漢字」を取り扱っていますが、これらはいつの時代から用いられるようになったのでしょうか? 文献や出土品などの史料によれば、紀元前1600年~1050年頃の中国殷王朝の時代にはすでに使用されていたようで「甲骨文字」と呼ばれるものが「漢字」の起源となっていると考えられています。その役割は様々で、古くは神との対話を文字にして人々に伝える目的などのほか、支配者の偉大な功績を後世に残す記録や政治を円滑に進めるための手段などに用いられたとされています。日本に「漢字」が伝わったのは弥生時代の後半期、文字として使用されるようになったのは古墳時代中期となる5世紀頃からのようです。★文字を書くよりもパソコンのキーを打つ方が多くなっている昨今ですが、少しでも手で文字を書くという時間を持ちたいものですね。
「盆提灯」
2025.06.10

暦は移り明日は「入梅」。暦と重なるように全国の広い地域で梅雨入りとなりました。松江でも今朝は雨雲の広がる空模様となっていますね。★6月になると私たちは盆提灯の展示を始めます。画像のような「大内提灯」と呼ばれる三本足の組み立て式のものをはじめ、組み立て方法の簡単な伸縮型の提灯なども展示させていただきました。近年はモダンなお仏壇に合うシンプルな構造の提灯も多くなっていますね。★仏教では「六種供具」のひとつとして古くから「灯明(とうみょう)」が用いられてきました。灯明はその闇を破る悟りの智慧、あるいは般若をあらわすなどと解釈されます。提灯は照明器として独自に発達した歴史があるとされますが、やがてお盆の魂迎えや魂送りに用いられるようになったと考えられています。江戸時代の慶長年間(1596~1615年)には岐阜地方に産する竹を骨として美濃紙を張った提灯を領主の尾州候が三代将軍に献上したという記録が残されています。江戸で一般に軒先に吊して用いられるようになったのは、さらに時代が下った江戸時代後期の文政、天保年間の頃になってからだそうです。★灯火の燃料を準備することが簡単ではなかった時代の人々にとって「明かり」は現代では想像もできないほど大切なものだったのかもしれませんね。
「田植え」
2025.05.30

今日の松江は雲の多い朝を迎えています。全国的に不安定な天候になりそうですね。★松江周辺では田植えのピークを越えたようで、先日通りかかった郊外の水田でも植えられたばかりの苗が風になびいていました。日本の稲作では台風や日照不足などの心配が常に頭から離れませんので、実りの秋を迎えるまでは祈るような気持ちではないでしょうか。当たり前のように毎日食べるお米も農家の方々の日々のご苦労のお蔭と思うと無事に育ってほしいと感じます。★最近は米の流通価格についてのニュースを耳にしない日はありませんが、過去にも不作による飢饉や米の買い占めなどにより米の価格が高騰した時代があったようです。古くは江戸時代の天候不順による米価格の高騰が暴動にまで発展した「大塩平八郎の乱」や、大正時代に民衆の行動に端を発した「1918年の米騒動」などが知られています。主食であるだけに米の問題は社会的に大きな影響があるようですね。現在のように諸物価が高騰している中では米の適正価格も分かりにくくなっていますが、日々の米作りに追われる農家の方々の努力やご苦労が報われるといいですね。★週末はそれほど気温が上がらないようで、来週にかけては雨雲も多くなる予報になりました。
「小満」
2025.05.20

昨日は全国的に気温が上昇して松江でも「夏日」を記録したようです。今日はさらに暑くなりそうな予報になっていますね。★季節は移り、明日は二十四節気の「小満」となります。「気候が良くなり、あらゆる草木が成長し、やがて天地に満ち始める頃」という意味があるそうです。これからは気候も良くなり、何をするにも適した過ごしやすい時期と言えそうですね。農家の方々にとっても田植えの最盛期となっているのではないでしょうか。★農家の方々が忙しくなる時期と重なるように、私たちの日常も慌ただしくなります。盆提灯の展示や、お盆に合うようにお預かりした仏具の修理などでこれからの2ヶ月半は普段とは違う生活になります。お位牌の戒名彫刻などは時間も掛かりますので5月後半からは特に忙しく感じます。どんなに慌ただしい時期でも気を抜くことはできませんのでいつも真剣勝負ですね。画像のお位牌は「坊塔位牌」と呼ばれる寺院用のお位牌で、ご住職様の戒名を彫刻します。丁寧に仕上げてお届けしたいと思います。★4月にやって来た玄関先のツバメも雛が孵ったようで、季節の移ろいを感じます。6月には巣立って行きそうですね。