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「いろは歌」

2021.03.25

いよいよ春を迎えて周辺のソメイヨシノも咲き始めています。昨日は好天に恵まれて松江城二之丸の桜を撮影することができました。★「色は匂へど散りぬるを 我が世誰ぞ常ならむ 有為の奥山今日越えて 浅き夢見じ酔ひもせず」これは現在でも広く知られている「いろは歌」ですが、成立したのは文献の記録などから10世紀末から11世紀と考えられているそうです。中世から現在に至るまで様々な解釈がされているようですが、多くは「匂い立つような色の花も、やがては散ってしまう。この世で誰が不変であろうか。今、現世を超越して儚い夢を見たり、酔いに耽(ふけ)ったりすまい」など仏教的な無常観を歌っていると言われます。12世紀の真言宗の僧侶である覚鑁(かくばん)は、いろは歌は「涅槃経」の中の無常偈「諸行無常、是正滅法、生滅滅已、寂滅為楽」であるとし、諸行は無常であり、これは生滅の法である。この生と滅を越えたところに真の大楽があると伝えています。私たちの子供の頃は意味も分からず諳んじたものですが、解釈を聞いても正直なところ難しく、奥が深いと感じます。江戸時代には寺子屋などで手習いのお手本として用いられたようで、小さな子供たちに至るまで「いろは歌(覚)」は広まったそうです。★今年の開花は平年よりも早いということです。まだ咲いていない枝も多く見られるので4月上旬までは艶やかな桜を楽しめそうですね。

「雪裡梅花只一枝」

2021.03.15

いよいよ春のお彼岸を迎えて気候も穏やかになり、日増しに春らしさを感じるようになりました。松江城の椿谷では2月中旬からこの時期にかけて多くの梅が咲き誇り、独特の甘い香りを漂わせます。先日は僅かな時間でしたが眺めることができました。★「道元禅師」の師匠である「如浄禅師」は厳しい寒さの中で修行する弟子たちに「雪裡梅花只一枝(せつりのばいかただいっし)」という詩を送ったと伝えられています。これは冬の厳しい寒さの中で雪に埋もれながらも力強く咲く梅の姿を詠まれたもので、人の歩みもまた厳しい苦難を乗り越えてこそ真理にたどり着けるとし、そこにはかけがえのない価値があるとしました。慌ただしい日常生活の中では仏道世界の修行の厳しさなど想像することさえ出来ませんが、せめてお彼岸の時期だけでも穏やかな心で普段の行いを省みたいものです。★実はお彼岸はご先祖を敬うとともに、六波羅蜜(布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧)を実践する期間とされています。仏道では「因果の道理」が根本にあり、この六波羅蜜は特に大切な修行徳目とされているそうです。言葉にすると難しそうですが、案外私たちの日常生活の中でも実践できる修行と言えるかも知れませんね。★今日は全国的に気温も上昇して春らしい穏やかな天気になる予報になりました。

「位牌修理③」

2021.03.05

今日の松江は雨模様になっていますが、風は温く気温もそれほど低くないようです。徐々に春の気配を感じるようになりますね。★暦の上では「啓蟄(けいちつ)」を迎えました。啓蟄は土の中で冬ごもりをしていた虫たちが春の訪れを感じて這い出して来る頃とされています。2月の終盤から降った雨も大地を潤して、これまでモノトーンだった松江城周辺の草木も鮮やかな色合いになってきました。慌ただしく過ごす日々の中では見失いがちになりますが、いよいよ季節の変わり目に差しかかっているようですね。★位牌の修理は最終段階となりました。ここでは「箔押し漆」を摺り込み、金箔を張り付ける作業になります。刷毛で摺り込んだ漆を綿で丁寧に拭き上げ、静かに金箔を張り付けます。師匠から「彫り物の奥に入り込んだ漆も丁寧に拭き上げること」と厳しく教わったことを今でも思い出します。拭き残しがあると金箔の仕上がりにムラが出るので漆の表面が平滑になるよう丁寧に拭き上げます。慣れるまではこの作業がとても難しく感じたものです。最後に札板部分の金箔が十分に乾いたことを確認してから黒漆で戒名を書き入れます。これはやり直しの許されない作業ですので細心の注意を払って仕上げ、書き入れた戒名が乾けば完成となります。★まだまだ寒い日もありそうですが、体調管理に留意して暖かい春を迎えたいものですね。

「位牌修理②」

2021.02.25

今週は春を思わせる穏やかな天気が続きました。朝晩の寒さも和らいで、堀川周辺の草花も芽吹き始めているようです。★2月は「如月(きさらぎ)」。これは中国の「如月(にょげつ)」に由来するとされていますが、日本ではまだ寒さが厳しく更に衣を重ね着する時期であることから「衣更着(きさらぎ)」と読むようになったという説、あるいは草木の芽が張り出す頃であることから「草木張月(くさきはりづき)」となったという説などがあるそうです。旧暦では1月から3月が春とされ、2月はその真ん中の月ということから「仲春(ちゅうしゅん)」という呼び方もあるようです。いずれも季節の移ろいの中で暮らす人々の感情を表した風情のある呼び方ですね。★お位牌の修理は順調に進んで下地処理と塗りが終わりました。画像はお位牌に金箔を施す前の状態で、一般的に修理の終盤はこのような黒い色の状態になります。塗りは金箔を押すことを前提にしていますので「箔下漆」と呼ばれるものを使用します。金箔の輝きに落ち着きを持たせるため「艶消し漆」を混合して下塗りの段階で塗り艶を抑え、刷毛塗りで仕上げますので仕上げ塗りでは「消し筋」や「刷毛目」が残らないよう十分に注意して塗ることになります。★今日は穏やかな天気になりそうですが、今夜から週末にかけては雲が多くなる予報ですね。