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「金箔」

2021.10.15

今週に入ってからは朝晩の気温も一段と低くなっているようです。徐々に秋の深まりを感じるようになりましたね。★今年も残すところあと2ヶ月半となって、工房では年内完成予定の仏具の仕上げに取り組んでいます。スケジュール通りに行かないこともありますので、いつの間にか夜が遅くなってしまいます。昔のことですが、私の師匠からは「金箔押しはどんなに忙しい時でも手を抜くな!」と厳しく教えられました。今でも時々思い出しますね。時間に追われるままつい寝不足になりがちですが、丁寧に仕上げるよう心掛けたいと思います。★日本で金箔が取り扱われるようになったのはいつ頃からでしょうか。正確な史料は少ないようですが、6世紀前半のものと推定される甲山古墳(滋賀県野洲町)から金糸が、7世紀末から8世紀に建造されたと見られるキトラ古墳(奈良県明日香村)からは金箔で星座を描いた天文図が見つかっています。752年に開眼会が行われた東大寺大仏殿の「鴟尾」にも金箔が使われていたことが分かっており、この頃には既に金箔の技術があったと考えられています。かなり古い時代から金箔技術はあったようですね。現在の金箔は加賀藩の時代の生産技術が今も受け継がれている石川県金沢市が主産地となっていて「金沢箔」は国の伝統工芸品にも指定されています。★今日は穏やかな天気になりそうです。明日からはまた不安定な天候になる予報が出ていますね。

「収穫祭」

2021.10.05

秋の実りの収穫もいよいよ終盤を迎えています。豊かに実った稲穂を眺めるとホッとした気持ちになりますね。ありがたいことです。この時期からは各地で豊かな収穫に感謝し、翌年の豊作を願う「収穫祭」や「感謝祭」が行われます。これらの祭りは農業が盛んな地方を中心に定着していますが、私たちの生活の中にどのように浸透したのでしょうか。★狩猟生活から農耕生活に移行して定住が始まると、人々は安定した収穫を願うようになったと考えられています。日本では穀物に対する「穀霊信仰」が生まれ、「祖霊信仰」と合わせて神々に豊作を祈る儀式が行われるようになり、やがて神社の「秋祭」へと引き継がれるようになったと言われています。世界的に見ると農耕民族だけでなく狩猟民族なども供物を捧げて豊猟を祈願する儀礼があったようです。また、人智を超えた大自然の脅威に対して、呪術的な儀式や占いなども生まれたと言われ、古くは卑弥呼なども祭礼を司る祈祷師として執政したと伝えられています。日本では祭祀を司る者と政治を司る者が一致した歴史があり、現在でも政治のことを「政(まつりごと)」と呼んでいます。「祭り」は長い歴史の中で人々の暮らしに根付いた文化そのものなのかも知れませんね。★今週も日中は穏やかな天気になりそうですが、朝晩は少しずつ肌寒さを感じるようになってきました。

「無功徳」

2021.09.25

朝晩には秋の風を感じるようになりました。日中の気温も穏やかになってすっかり過ごしやすくなりましたね。★禅宗の祖である達磨大師は6世紀初頭にインドから中国へ禅を伝えたことで知られています。やがて禅宗は中国で大きく発展し、達磨大師の伝説は現在でも禅宗の大切な教えとなっています。当時、梁(中国)の王であった武帝は仏法に深く帰依し、インドから渡った達磨を喜んで迎え入れました。ある日、武帝は金陵(現在の南京)の宮中に達磨を招いて尋ねます。「私はこれまで多くの寺を建立し、経文を写し、多くの僧侶を育ててきた。私には将来どれだけの功徳がもたらされるだろうか?」と。武帝はさぞかし褒め称えられ、多くの功徳が得られるとの返答を期待したのでしょう。しかし、達磨は「無功徳(むくどく)」と言い放ちます。武帝の善行は世俗の成果を求めている行いに過ぎない。目先の見返りを求めた善行に何の功徳があろうか。武帝にとっては意に反する返答になったようですが、達磨は武帝の心の中にある執着を捨てさせるため、あえて厳しい言葉をかけたとも言われています。★来週の前半までは比較的穏やかな天候になりそうですが、週の後半には台風16号が接近する予報になっています。地域によっては注意が必要になるかも知れませんね。

「夕日信仰」

2021.09.15

夕日に向かって手を合わせる姿を描写したシーンは、古い時代劇などでも見かけますが、なぜ人々は夕日に手を合わせるのでしょうか。今日一日、無事に過ごせたことに感謝し明日の平安を願うなど、思いは様々なのでしょう。あるいは、極楽への往生を念ずるなどの場面もあるかも知れません。これらの風習は浄土信仰における西方に極楽浄土があるという考え方に、日本古来の感性が融合して醸成されたものと考えられています。その起源は定かではありませんが、遅くとも平安時代末期には落日を観ずる風習があったと伝えられており、聖徳太子ゆかりの寺である大阪四天王寺では現在でも淡路方面に沈む夕日を拝する「日想観」の行事が執り行われることで知られています。松江も宍道湖の西方に夕日が沈む立地であることから、多くの人々が様々な思いで手を合わせてきたのではないでしょうか。★来週には「秋のお彼岸」を迎えます。この時期は太陽が真東から昇り、真西に沈むことからこの世(此岸/しがん)とあの世(彼岸/ひがん)がもっとも通じやすい時と考えられ、ご先祖や亡き人を偲ぶ日、あるいは来世を想う日として捉えられてきました。また、現在では宗派に関わらず、お墓参りをして慈しみの心で過ごす時期として定着しています。慌ただしく時間に追われる毎日ですが、お彼岸にはご先祖や大切だった方を偲び心静かに過ごしたいものです。