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「耐雪梅花麗」

2022.02.19

「立春」を過ぎる頃には穏やかな日もありましたが、今週は再び寒さが厳しくなりました。この冬一番の積雪になった地域もあったようですね。★暦の上では「雨水」。この時期には梅の花が咲き、各地の梅の名所では「梅まつり」などの行事も行われるようになります。一昨日は松江城椿谷の梅も、寒さの中で少しずつ咲き始めていました。現代の日本人にとって「お花見」といえば桜をイメージしますが、奈良時代の人々は好んで梅の花を観賞していたそうです。雪の中で寒さに耐え、じっと春を待つ健気な姿は日本人の感性と重なっているように感じますね。★「雪に耐えて梅花麗しく 霜を経て楓葉丹し・・」これは幕末の志士、西郷隆盛がアメリカに留学する甥の「市来政直」に贈った詩で、「厳しい雪の寒さに耐えてこそ梅の花は美しく咲いて芳しく香り、楓の葉は厳しい霜に晒されるからこそ晩秋に美しく紅葉する」という意味になるそうです。解釈としては、「どんな苦難や試練があろうと耐えて乗り越えれば大きく成長することが出来る」とされ、妹の長男である政直に対する温かい思いが伝わります。端正で流麗な言葉で表現されていますが、緊迫した幕末の政情の中で活躍した西郷隆盛の波瀾万丈であった生涯を思うと重みがあります。★今週末はまだ雲が残りそうですが、来週の後半には穏やかな日差しが戻りそうな予報になっていますね。

「錺(かざり)金具」

2022.02.10

今日の松江は雲の多い朝を迎えています。気温はそれほど下がらないようなので雪の心配はなさそうですね。★塗り仏壇の修復は折り返しを過ぎました。お預かりした仏壇は「松江仏壇」の特徴でもある「塗り宮殿」が組まれており、それを支える6本の宮殿柱には職人の手打ちによる「錺(かざり)金具」が施されていました。先週までに刷毛塗りで仕上げておいた宮殿柱が十分に乾いたので、メッキ再生処理を済ませた錺金具を取り付けます。これらの金具の多くは唐草や菊、蓮などの文様が描かれ、柱を巻くように取り付けてあります。それぞれの金具は浮き上がりが出ないように角度を合せ、慎重に打ち付けて柱部分は完成となります。修復することを前提に造られたお仏壇ですので説明書などはありませんが、分解から組み立てまでの手順は分かりやすく出来ています。制作当時に込められた職人のメッセージが伝わってくるようですね。★現在の寺院建築や仏壇の金具は伝統的な手打ち金具のほか、プレス機械を使って製造されるものやNC加工機などにより製造されるものも用いられます。素材は銅、真鍮が主流ですが、近年はアルミなどの金属素材も使われるようになっています。(画像はご依頼者様にご了解を頂き掲載しています)★週明けからはまた不安定な天候になる予報が出ています。松江城椿谷の梅の花がほころぶまではもう暫くかかりそうですね。

「鬼」

2022.01.30

冬至の頃には夕刻になるといつの間にか薄暗くなっていた景色も、最近では午後6時頃まで明るさが残るようになりました。ほんの少しずつですが、春が近づいていると感じますね。★今週は節分、そして立春を迎えます。節分は「季節を分ける」という意味の言葉で、立春、立夏、立秋、立冬の前日がそれぞれ節分となります。古くから季節の変わり目には「邪気(鬼)」が生じると信じられていたことから、節分には悪霊払いの行事が行われていたそうです。中国の風習を由来とする平安時代の「追儺(ついな)」などの宮中行事が始まりで、次第に庶民の暮らしの中にも「厄除け招福」の行事として浸透するようになったようです。現在も立春の前日の節分には「鬼は外、福は内」などと声を出して福豆をまく風習が残っていますね。★画像は京都南禅寺にある「六道庭」の片隅に置かれた鬼瓦。煩悩に迷い、涅槃の境地に達することなく輪廻する六道の「餓鬼界」を表しているのでしょうか。本来、鬼瓦は厄除け、魔除けのために家屋の屋根に設けるもの。鬼はその険しい表情から、邪気や悪霊に見立てられたりしますが、家人のための守護神にもなったりするようです。鬼は昔から人々の近くに居る馴染みの深い存在だったのかもしれませんね。★週の後半にかけて不安定な天候になる予報が出ています。日中の気温もそれほど上がらないようなので、体調維持に留意したいものですね。

「大寒」

2022.01.20

暦の上では一年で最も寒い時期とされる「大寒」迎えました。松江も朝から小雪の降る天気になっています。気温も終日低くなりそうですね。★真言宗の開祖である弘法大師空海が亡くなったのが835年の3月21日と伝わることから、毎月21日はお大師さまの縁日とされています。1年の最初の21日は「初大師」と呼ばれ、ご縁のある寺院では様々な行事が行われます。京都の東寺では「初弘法」と呼ばれる市も開かれ、多くの人々で賑わう行事となっているそうです。また、神事としては、大寒の時期に冷水を浴びて罪穢れを払い、一年の幸運を祈願する「大寒禊」と呼ばれる行事を行うところもあるそうです。暖かな春が待ち遠しく感じるのもこの頃からですね。★工房では年末から「塗り仏壇」の修復を進めています。塗り仏壇の修理手順は大きく分けると「分解と洗浄」「塗りと加飾」「組み立て」の3段階ですが、最も手間のかかるのが「塗り」で、この行程では塗りと水研ぎを繰り返し表面を滑らかに仕上げます。「水研ぎ」では水で濡らした指先で表面を撫でて、目視では確認できない歪みやうねりを見つけて修正します。この時期は冷たい水で指先にあかぎれを起こしてしまいますが、丁寧に仕上げてお返ししたいと思います。★明日も気温が下がる予報になっています。体調管理には十分気を付けて過ごしたいですね。