「観音菩薩坐像修理③」
2021.06.15

今週は全国的に大気が不安定で変わりやすい空模様になっているようですね。今日は松江も雲の多い朝を迎えました。★先月から我が家の玄関先ではツバメが新たな巣を作っていましたが、先週の中頃に数羽の雛が誕生したようです。親ツバメがしきりに餌を運んでいて、昨日は巣から雛の頭が見えるほどに成長していました。ツバメはカラスなどの天敵から身を守るために、あえて人が往来する民家の軒先などに巣を作るそうですが、野生の鳥が私たちの生活に密着して暮らしていても違和感がないのは不思議ですね。昨年は我が家には一度もツバメが来なかったので、今年は無事に巣立ってほしいものです。★観音菩薩の修理は「金箔工程」を終えて折り返しを過ぎました。台座部分と衣は半艶消しの金箔仕上げで、顔や胸などの肌部はさらに艶を消した金粉仕上げとします。宝冠の下の頭部は群青の彩色で下地には膠胡粉を塗ります。これは彩色の発色を良くするためには欠かせない下地で、膠が薄いと剥がれやすく、逆に濃いと割れの原因になりますので慎重に調合します。さらに眼を入れて冠金具、蓮華を取り付け、同時進行で進めている厨子に納めて完成となります。仏像修理は気の抜けない工程ばかりで、何度経験しても身の引き締まる思いがします。★週末にかけても梅雨らしい不安定な天気になりそうです。出掛ける時は傘が必要になりますね。
「観音菩薩坐像修理②」
2021.06.05

昨日の松江は朝から雨模様でしたが、今日は青空ものぞく朝を迎えました。終日、雨の心配はなさそうです。暦の上では「芒種(ぼうしゅ)」を迎えています。例年はこの時期に梅雨入りすることも多く、気温や湿度の変化が激しくなることから食中毒の流行り始める時期と言われます。日中の気温が急に上昇する日も多くなる時期なので、水分補給にも心掛けたいですね。★観音菩薩の修理は「塗り工程」の終盤に差しかかりました。分解してから分かったことですが、これまでに何度か修復を受けた痕跡がありました。厨子の柱周辺の部材は一部が欠損していたようで、同様の木地で丁寧に後補されていました。今回の修復では台座の部分の木地の痩せが原因と思われる傾きがあり、全体が垂直にならない問題が発生したので差し板をいれて調整しています。仏像を修復する場合は細かく分解するほど丁寧な修復が可能ですが、接着で用いられた膠(にかわ)の固着が強すぎると膠が溶ける前に木地が傷んでしまいますので、分解は程々のところで留めます。今回は損傷の具合と箔押し工程を考慮して、台座部分の分解は3分割としました。「塗り工程」は研ぎと塗りを繰り返す地味な作業ですが、手の抜けない大切な工程と言われます。★明日からはまた青空が広がりそうな予報になりました。気温も上昇しそうですね。
「観音菩薩坐像修理①」
2021.05.25

松江は青空の見える朝を迎えました。梅雨に入ってからは雨の日が多くなりましたが、まだ蒸し暑さを感じるほどではないようですね。★私たちの工房ではこの時期からお盆までの間は、仏像や仏具の修理などで慌ただしくなります。画像は修復でお預かりした「柱付丸厨子と観音菩薩坐像」で、分解工程途中のものです。在家用の厨子(ずし)は「丸厨子」と呼ばれるものが一般的ですが、このような柱付の厨子は珍しく、最近では殆ど見ることがなくなりました。この厨子は虫食いなども見られず、大切にされていたことが伺えます。(画像はご依頼者様にご了解を頂き掲載しています)★仏像を修復する場合は施主様のご意向が最優先で、そのうえで当初の仏像製作者の作意を尊重し、最大限にその意図を遺すように心掛けます。また、再び修復されることを前提にした手順が基本で、目に見えない部分も手を抜かないことや、基本に忠実な修復技法が必要になります。技術的なことは師匠から一通り教わりますが実践することはなかなか難しいもので、私も駆け出しの頃は試行錯誤の繰り返しだったと記憶しています。この観音菩薩坐像と厨子も丁寧に修復してからお返ししたいと思います。★週末にかけては雲の多い日もありそうですが、徐々に気温は上昇する予報になりました。
京都「葵祭」
2021.05.15

今日の松江は青空の広がる朝を迎えました。今週は全国的に穏やかな日が多かったようですね。★毎年5月15日は京都「葵祭」の日。残念ながら今年も新型コロナ感染拡大の影響で行列は中止になったそうです。「葵祭」は欽明天皇(~571年)の時代に凶作に見舞われ、疫病なども流行したことから天皇が勅使を遣わして「鴨の神」の祭礼を行ったのが起源とされていています。今から1400年も前のことですね。「葵祭」は上賀茂、下賀茂神社の例祭で「祇園祭」「時代祭」とともに京都の三大祭りのひとつに数えられており、平安中期には「祭り」といえば「葵祭」を指すほど盛隆を極めたそうです。平安装束に身を包んで優雅に進む行列の姿は実に艶やかで平安絵巻を観ているようです。★欽明天皇の時代といえば、大陸から仏教が伝わったことでも知られています。百済から伝えられたのは仏像や仏具、経典などであったそうですが、当時の貴族にとって仏教文化の伝来はまさに驚きの出来事だったのではないでしょうか。人々は日本の神々を大切にしつつも大陸の仏教を受け入れ、長い歴史の中で神仏は融合し日本固有の信仰、精神、文化を作り上げたと言われます。普段、気に留めることはありませんが、多くの分岐と変遷を繰り返した現在でも、人々と神仏との関わり方の本質に大きな相違がないことには驚くばかりです。★九州南部は梅雨入りしたそうですね。山陰でも来週にかけては不安定な天候になる予報になりました。