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「夏越の祓」

2022.06.30

28日には中国地方も梅雨明けしたようです。松江でも今週に入ってからは猛暑が続いていますね。★旧暦の6月30日には古くから「夏越(なごし)の祓(はらえ)」と呼ばれる神事が執り行われていたそうです。これは1年の半分の区切りとなる日に、心身の穢れや災厄の原因となる罪を祓い清める儀式で「六月の祓」とも呼ばれます。この神事で行われる「茅の輪(ちのわ)くぐり」などは現在でも多くの神社で見かけますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。「茅の輪くぐり」は神社の鳥居などに茅(ちがや)と呼ばれる草で編んだ直径数メートルの輪を作り、これをくぐって厄災を祓い清める儀式です。起源については諸説あるようですが、日本神話に登場するスサノオノミコトに由来するとも伝えられていますね。明日、7月1日は今年後半の始まり。気持ちも新たにスタートしたいものです。★観音菩薩像の修復は金箔押しと宝冠部分の胡粉地塗りが終わりました。箔押し漆を擦込む作業では仕上がりと耐久性の両方を考慮します。擦込んだ漆を丁寧に拭き取ることで美しい金箔の仕上がりとなりますが、拭き取り過ぎると美しい反面、耐久性は乏しくなります。逆に拭き取りが甘いと美しさが犠牲となります。修業時代にはその加減が分からず、厳しく指導されたことを今でも思い出します。★今日も厳しい暑さになる予報が出ています。こまめな水分補給は欠かせませんね。

「夏至」

2022.06.20

松江では連日、日中の最高気温が30度前後となっています。梅雨入りした後も暑さは厳しいままですね。明日は「夏至」。年間を通して昼間の時間が最も長くなる時期にあたり、今朝も朝の4時半頃には東の空の方角からが徐々に明るくなっていました。★古くから農耕文化を中心とする日本では、夏至の時期になると自然の恵みに感謝し豊作や無病を願う風習が残っている地域があります。また、北欧の国々でもこの時期になると神々しい太陽の恵みに感謝するお祭りが華やかに行われるそうです。イングランド南部のストーンヘンジ遺跡では「夏至祭」が盛大に行われ、白夜の国スウェーデンでは、いつまでも沈まない太陽の日を浴びて祝う「夏至の祭り」が賑やかに行われます。夏の短い国の人々にとっても「夏至」は大切な祝日になっているのかもしれませんね。★聖観音立像の修復は木地製作と箔下塗りが終わりました。画像はその段階のものです。塗りについては何度か修復された痕跡があり、長い間にわたり大切にされてきたことがうかがえます。金箔の輝きに落ち着きを持たせるため、塗りは消し仕上げとしています。このあとは金箔押し、金粉蒔き、宝冠部分の彩色、小物の製作、光背と厨子の仕上げとなります。★今日一日は厳しい暑さとなりそうですが、明日からは雲の多い天気になる予報になりました。

「芒箔」

2022.06.10

夏も近くなり、徐々に日差しが強くなってきました。店舗ではこれまで夏の日除けとして昇降式のテントを使用していましたが、歩道を歩く方の迷惑になるので新たに暖簾(のれん)を作っていただきました。この時期からは暑さ対策とともに日差しの対策も必要になりそうですね。★暦の上では「芒種(ぼうしゅ)」を迎えました。あまり馴染みのない言葉ですが、「芒」(のぎ、ぼう)はイネ科の植物の先端の尖った部分のことで、「芒種」は稲や麦などの種を蒔く頃という意味だそうです。実際には田植えが終わる時期になるようで、農家の人々にとってはこの頃から秋の収穫の季節まで作物には目が離せなくなりますね。★「芒(のぎ)」は稲や麦の先端の突起という意味のほかに「細く切った金箔」という意味があります。これは「芒箔(のげはく)」などと呼ばれ、装飾経や絵巻の詞書(ことばがき)の下絵、装丁の装飾などに用いられます。実は、仏像製作でも同様の金箔を装飾工程で使用します。髪の毛ほどの細さに裁断した金箔を1本1本丁寧に仏像に貼り付けて装飾する技法で「截金(きりかね)細工」と呼ばれます。たしかに、秋の実りの時期の稲穂の先端の部分と「芒箔」の色形は似ているかもしれませんね。★一頃の厳しい暑さは和らいで過ごしやすい日が続いています。山陰では適度な雨も降り、草木にとっては恵みの雨になったようです。

「蓮華座仮組み」

2022.05.30

ここ数日は松江でも夏のような気温になっています。まだ5月も終わっていないというのに各地で猛暑となっているようですね。★仏像を修理する場合は最初に木地(構造体)を完成させます。元の状態を保持するのが基本で、傷みのある部分もできるだけ本来の状態を維持するよう補修します。欠損のある部位は作り直すことになりますが、その場合でも元の状態をイメージして再現するよう心掛けます。実はここが一番難しく、思案する部分となりますね。今回は蓮華座の部分が欠損していましたので、この木地を最初に作りました。厨子にきちんと納まること、全体の均整が取れていることなどを考慮して作ります。画像は蓮華を仮組みした状態のもので、ここから何度も分解と仮組みを繰り返して形を整えます。★観音菩薩は「観音経」や「般若心経」などに登場する大慈大悲の菩薩として知られていますね。日本では7世紀頃から国家鎮護や民衆の現世利益、浄土信仰など、幅広い願いを受け入れて作られるようになったようです。観世音菩薩普門品には三十三の姿に身を変えて衆生のあらゆる苦難を救う菩薩(観音三十三身)と説かれており、古くから庶民の間にも浸透した仏さまの一つと考えられています。★母里佛具店では第1・第3日曜日が定休日となっていますが、6月からお盆までは無休となります。ご予約、納品も対応させて頂いておりますので宜しくお願いいたします。