「冬至」
2023.12.20

先週末からはすっかり気温も下がって冬型の天候になっています。堀川遊覧船を楽しむ皆さんも船に積まれたコタツを囲むように乗船しておられました。★今週は一年で最も日照時間が短くなる「冬至」を迎えます。冬至は厳寒の冬に向かう時期でもあり、古くから健康に配慮して栄養価の高い食事を摂る習慣があったそうです。また、冬至を過ぎると少しずつ日照時間も伸びることになり、「一陽来復(いちようらいふく)」と言って徐々に運気が上昇し始める頃とされてきました。★暦の上での「冬至」という概念はいつ頃からあったのでしょうか?世界の暦の始まりは紀元前3500年前後に栄えたメソポタミア文明の頃と考えられています。暦では一年で最も太陽の力が落ちる「冬至」の時期が一年の始まりとされ、古くは冬至の前後に新年の祭りが盛大に行われていたようです。また、古代ローマでも農耕の神を祀り、邪鬼を払う「冬至祭」が行われ、人々は仮装して会食を催し、プレゼントを交換するなどの文化があったそうです。12月25日はイエス・キリストの降誕を祝う日として定着していますが、クリスマスは古代ヨーロッパの「冬至祭」の風習と「キリスト教」が結びついて現在のような形になったと伝えられています。日照時間が最も短くなる時期を節目と考えて、世界で様々な祭りが催されてきたことは興味深く感じますね。★12月25日(月)は店内電気工事のため臨時休業となります。ご不便をお掛けしますがよろしくお願いいたします。
「聖観音菩薩像修復④」
2023.12.10

今日の松江は雲の多い朝を迎えました。気温は穏やかで寒さも感じない一日になりそうですね。★聖観音菩薩像の修復は無事に終わりました。造られた当初はこのような状態であったのではないでしょうか。一般に、古い仏像はそれぞれ異なっており、損傷の程度も一様でないことから、特定の仏像修復のための解説書などはありません。師匠から教わった修復技法やこれまでの経験を基に、可能な限り最良の手法で修復することになります。多くの場合、修復途中で様々な困難に遭遇することになり、想定通りに進むことは殆どありません。今回もいくつかの場面で悩むことになりました。宝冠部分の剥離した胡粉の処理が思うように行かず、これは何度もやり直しをしています。また、欠損した右手の製作についても左右の腕が蓮弁を開こうとする位置にないことから、多くの資料を検証することになりました。完成がやや遅れてしまいましたが、無事に納入することができて安堵しております。★師匠から教わった修復技法に関わる記録を紐解いてみると「仏像はあくまでも信仰の対象であり、その技法はそれに相応しいものであるか」「その技法は百年後まで残ることを前提としているか」「将来、再度修復された場合、職人が基本技法を用いて再修復できるよう考慮しているか」とあります。今では尋ねることも叶いませんが、困難な場面に遭遇する度にここに立ち戻るようにしています。★週明けから雲の多い天候になりそうな予報になっています。週の半ばにかけては雨の降る日もありそうですね。
「聖観音菩薩像修復③」
2023.11.30

今週に入ってからは時折、冷たい風も吹くようになっています。いよいよ冬の入り口に差し掛かっているようですね。★今年も残すところあと1ヶ月となり、早いもので明日からは師走を迎えます。師走という言葉は古くからあったとされ、すでに奈良時代や平安時代の文献には記載があったとあります。もともとは「とし(年)」が「はす(果てる)」などという意味で使われた言葉であったようですが、現在のように先生(僧侶)でさえ走り回る忙しい月という意味で使われるようになったのは江戸時代以降という説が有力だそうです。何かと慌ただしい昨今では「師」はもちろん、すべての人々にとって忙しい時期となります。風邪など引かぬよう、無事に師走を乗り切りたいものですね。★観音菩薩像の修復は加飾工程に入りました。画像は各部位に金箔を押して仮組みをした段階で撮影したものです。金箔は極めて薄いものなので、仕上がりを左右するのはその前の塗り工程の出来次第となります。すべての工程も同様で、一連の作業はすべて繋がっており見えない部分も手を抜くことはできません。師匠からは「途中で手を抜くと先で分かってしまうんだよね」と何度も教えられたことを今でも思い出します。このあと、眼入れ、宝冠金具、厨子の組立てとなり完成です。★松江は今日も雲の多い朝を迎えました。日中の気温もそれほど上がらない予報になっていますね。
「新嘗祭」
2023.11.20

山陰でも先週の後半から不安定な天候となり、週末には松江でも初雪が観測されました。11月上旬の夏日からわずか10日ほどで初雪が見られたのは意外でしたが、昨日は久し振りに気温も上昇して穏やかな一日になったようです。★鹿島町にある佐太神社では毎年11月20日から25日に「神在祭」が執り行われます。地元では「お忌(いみ)さん祭り」として親しまれていますね。神在祭では20日に「神迎神事」、23日に「新嘗祭」、25日に「神等去出神事」が斎行されます。23日の「新嘗祭(にいなめさい)」はその年の収穫に感謝して新穀を神前にお供えし、来年の豊穣を願う行事とされています。これは日本書紀にも登場する古くからの宮中祭祀で、現在は全国の神社でも執り行われます。この日は「勤労感謝の日」として広く知られていますが、戦前は「新嘗祭」と呼ばれる祝日だったそうです。大自然の恵みや生きることそのものに対する「感謝の日」と言えそうですね。★聖観音菩薩像の修理は下地と木地の補修が終わって、中塗りの最終段階になっています。画像は各部位を仮組みしたもので、まだ結合はしていません。心配していた右手と蓮華、両足の製作は順調に進み、ようやく完成時の様子がイメージ出来るようになりました。このあと丁寧に水研ぎを施し滑らかにしてから、仕上げ塗り、金箔押し、加飾となります。★今週の前半は日中の気温も持ち直して穏やかな天候になりそうな予報が出ていますね。