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「桃の節句」

2023.03.03

厳しかった寒さも和らぎ、季節は冬から春へと変わろうとしています。日中には暖かい日差しも降り注ぐようになっていますね。★今日、3月3日は雛祭り。旧暦では桃の花が咲く時期にあたることから「桃の節句」とも呼ばれます。もともとは紙などで人の形を作り、これに子供の病や邪鬼を移して川に流した「流し雛」と呼ばれる厄除けの行事が起源となっているそうです。この時期に咲いた「桃の花」は美しいだけでなく、厄払いや魔除け、長寿をもたらす力があるとされたことから雛壇にも飾られます。雅を極めた美しく華やかな雛人形の由来が邪鬼払いというのも意外な気がしますね。★中国では古来より桃の木は「仙木(せんぼく)」と呼ばれ、邪鬼を払う呪力があると考えられていたようです。桃膠(桃の木の樹液)から作られる仙薬は様々な効能があり、現在でも用いられます。古事記に登場する日本神話の「伊邪那岐命(イザナギノミコト)」が黄泉の国から逃げ帰る時に「桃の実」を投げて悪霊を退治したという話や、「桃太郎」が勇敢に鬼退治をする昔話なども桃が特別な力を持つと考えられていた証だったのではないでしょうか。いにしえの人々にとって桃の季節の人形は単なる飾りではなく、切なる願いを託す数少ない拠り所の一つだったのかもしれませんね。★今朝は随分と冷え込んだようですが、日中は好天に恵まれる予報になりました。

「梵字」

2023.02.20

暦の節は立春から「雨水」へと変わりました。雨水の頃には雪が雨に変わり、雪が溶け始める頃とされています。実際にはまだまだ寒さの厳しい日もありますが、それでも3月の「啓蟄」にかけて徐々に寒さは和らぎそうです。★「雨水」の時期はお彼岸の1ヶ月前に当たることから、私たちの工房も徐々に慌ただしくなります。特に過去帳やお位牌の戒名入れについて忙しくなるのもこの頃からでしょうか。画像は戒名入れに欠かすことのできない「梵字」。真言宗や天台宗、あるいは浄土宗などの戒名入れにはこの梵字を用いる場合があります。日常ではあまり見かけることのない文字ですが「梵字」とは一体何でしょうか? 一般には日本や中国などの漢字文化圏でのサンスクリット語の呼び方が「梵語」でその文字が「梵字」とされています。また、日本で用いられる梵字は仏教と深い関わりが深く、「悉曇(しったん)文字」とも呼ばれます。空海らが大陸から帰った経典類の中に、この悉曇文字で書かれたものが含まれていたこともあり主流の梵字となったようです。また、梵字は一文字で神仏を表すとされ、お位牌などには宗派の本尊などを表す梵字を上部に記す形で用いられます。随分と昔のことですが、師匠から梵字や戒名の彫刻は「仏さまを彫らせていただくという気持ちで精進しなければならない」と厳しく教えられました。懐かしいですね。★今日は雲の多い朝を迎えました。それほど寒さも感じない一日になりそうです。

「立春」

2023.02.10

暦の上では立春を迎えました。日中の気温も少しだけ上昇して、松江城椿谷の梅もほころび始めています。毎年、この時期になると椿谷を訪れることにしていますので、立春といえば「梅の開花」という感覚になっています。全国各地の梅も徐々に咲き始めているのではないでしょうか。★椿谷の梅の花を眺めていると、なぜか昔読んだサン・テグジュペリ作の「星の王子さま」に登場するバラの花を思い出します。王子さまは旅の途中で沢山のバラの花を見ますが、故郷の星に残してきた気難しくトゲのある1本のバラが自分にとってはかけがえのない大切な存在だったことにあとで気付くというお話。いつもそばで眺めていると分からないけど、離れてみるとその大切さや一緒に過ごした時間の意味を実感するという内容だったでしょうか。文中にある「本当に大切なものは目では見えない」という言葉が強く印象に残っています。★お釈迦樣が説いた「八正道」には最初に「正見(しょうけん)」が示されています。これはものごとを「正しく見る」ことの大切さを説いたものですが、先入観や偏見を捨てて真実を正しく見ることは簡単なことではないとされています。慌ただしく時間に追われる日常の中でも本当に大切なものや、感謝しなければならないことなど、つい見過ごしているかもしれないと感じることがありますね。★今日は朝から冷たい雨が降っています。日中の気温もそれほど上がらない予報になっているようです。

「雪化粧」

2023.01.30

穏やかだった大寒前から一転して、ここ数年で一番の積雪となりました。今朝は少しだけ寒さが和らいでいるようです。★この雪で松江城周辺も美しい雪景色となりました。華やかな色彩が溢れる現代社会の中では、時折出会う自然の中の素朴なモノトーンの色調に目を奪われます。画像は数日前の早朝に撮影したものですが、雪が自然の木々の輪郭を際立たせて一枚の水墨画のような風景になっていました。かつての人々が美しい景色を水墨画にして残そうとした気持ちも分かるような気がしますね。★大陸から伝えられた水墨画は仏教の「禅」と深い関わりがあるとされています。水墨画は墨の濃淡だけで描く技法により、ギリギリまで無駄を削ぎ落とすことで描く対象の本質を表現すると言われます。これは「我欲」や「煩悩」を削り取ることに繋がることから、古くは禅宗の僧侶の多くも水墨画を描いたそうです。元来、「禅」には「削ぎ落とすこと」あるいは「手放すこと」で本質的な豊かさを説く思想があるそうで、これも修行のひとつとされたようです。素朴で飾ることのない表現の水墨画は、謙虚さや忍ぶ心を尊重する日本人の自然観や人生観と符合してきたのかもしれませんね。★明日からは徐々に気温も上昇する予報になっています。立春頃からは青空も見られそうですね。