「灘町と共に」
2023.10.20

長い歴史をもつ松江の秋の伝統行事「松江祭鼕行列」が15日に盛大に開催され、14町内と2団体は揃いの法被に身を包み、勇壮な鼕の音を響かせながら松江城大手前から白潟天満宮前まで練り歩きました。画像は天満宮前で熱演に見入る市民の皆さんと石橋二丁目の鼕台。★7月には鼕行列の安全祈願祭が松江神社で執り行われ、同時に鼕の出発順を決めるくじ引きが行われました。今年の1番くじを引いたのは灘町。灘町の石川実行委員長は「先頭で叩けるのは名誉なこと。感謝の気持ちを込めて打ちたい」と語っておられました。しかし、残念なことに鼕行列前日の練習で鼕台の車軸が破損したとのこと。修理が間に合わず、やむを得ず参加を断念されました。どれほど無念な思いであったでしょうか。★鼕行列当日の式典では1番鼕の灘町の代表挨拶で「今年、灘町は鼕台を出すことはできませんが、心はひとつ。皆さんと一緒に参加させて下さい」と語っておられたのが印象的でした。直前まで準備をされた方々の悔しさは容易に想像できます。今年は「歳徳神」の下に2番札を掲げた幸町鼕台が先頭となる鼕行列でしたが、多くの参加者の心は「灘町」と共にあったのではないでしょうか。そして鼕行列は松江がひとつになる大切な祭りであると改めて感じた一日となりました。喜びも悔しさも織り交ぜて、また鼕行列の歴史の1ページが加わったような気がします。
「聖観音菩薩像修復①」
2023.10.10
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松江は小雨の降る朝を迎えています。今日は雲の多い一日になりそうですね。★京都などの寺院を巡ると数多くの観音菩薩像が祀られていることが分かります。「観音さま」として知られるこれらの「観世音菩薩像」はいつ頃から存在したのでしょうか?実はその起源は古く、インドでの観音信仰の成立は紀元1世紀頃とされています。当初は「聖観音像」が中心で、のちにヒンドゥー教の影響を受け、多くの顔や腕をもつ「多面多臂(ためんたひ)」などの密教的な観音像が誕生するようになったようです。5世紀頃には中国で観音造像が盛んになり、日本には飛鳥時代に伝来したと考えられています。当時の観音信仰は鎮護国家、あるいは除災などの現世利益が中心で、平安時代の10世紀頃になると浄土信仰の発達を背景に観音信仰も来世利益的な意味を持つようになります。のちに観音信仰は全国に広まり、衆生を救う慈悲深い菩薩さまとして民衆信仰の代表的な存在となったとされています。★現在でも観音様はお仏壇やお堂に安置され広く信仰されています。画像は「聖観音菩薩像」で、修理のご依頼を頂きお預かりしたものです。大変古い観音像ですが表情や衣、蓮華座などの彫刻は端正に仕上げられ、漆箔も丹念に施されています。経年による傷みは見られるものの、長い歳月にわたり大切にされてきたことがうかがえます。時間をかけて丁寧に修復してお返ししたいと思います。(画像はご依頼者様にご了解を頂き掲載しています)
「松江祭鼕行列」
2023.09.30

松江の秋の祭りといえば「鼕行列」。今年も10月の第3日曜日には「松江祭鼕行列」が開催されます。松江ではこの時期になると夕刻過ぎから市内のあちらこちらで鼕を叩く音が聞こえるようになります。私たちの住む町内も昨年に続き今年も参加することになり、大人も子供も一緒になって笛や太鼓、チャンガラなどを鳴らし練習に励んでいます。並べた太鼓を引きながら叩く祭りは全国的にも珍しいそうですね。松江の鼕行列は大正四年(1915年)大正天皇の御大典の折に屋根付きの鼕台に車輪を付けて、数十町内が行列したのが始まりと伝えられています。15日の当日は各町内ともに気合いの入った鼕や笛の音が聞けるのではないでしょうか。★季節はいよいよ秋へと移り、昨日は「十五夜」。旧暦の8月15日、新暦ではお盆をひと月ほど過ぎた頃「中秋の名月」を眺める日として知られています。昨夜は心配された雨雲もなく穏やかな夜空で、多くの方々が鑑賞されたのではないでしょうか。日本では平安時代の貴族の間ですでに「観月の宴」が催されていたようです。今から1000年も前から続いている文化ということになりますね。当時の人々は、空を見上げて月を愛でるのではなく、水面に映る月を眺め、あるいは杯に月を映して秋の夜を楽しんだそうです。なんとも風情のある楽しみ方ですね。★季節の変わり目には気温の変化も大きくなります。体調管理には十分留意したいものですね。
「秋のお彼岸」
2023.09.20

残暑も徐々に和らいで、早朝の風も涼しくなりました。季節はいよいよ初秋ですね。★今日は彼岸の入り。23日が中日で、26日が彼岸明けとなります。お彼岸の行事は、古来より農作が盛んであった日本の太陽信仰(日願)と、仏道修行により悟りの境地である浄土の世界(彼岸)に至るという信仰が合流し定着したものと考えられているようです。現在はご先祖に感謝し、また仏道修行(六波羅蜜)を通して自分自身を見つめ直す期間として捉えられています。江戸時代までは「仏教」ではなく「仏道」と呼ばれていたそうで、「修練」の意味はより大きかったのかもしれませんね。★日本では古くから仏教における「禅」と関連する様々な文化が発展を遂げてきました。「茶道」「華道」「剣道」「弓道」「書道」など根底では仏教と深い関わりを持っています。これらの文化は師匠から学び、厳しい修練を経て高度な技の習得を目指すとされます。ただ、本来の目的は「技の習得」ではなく、技の習得を通して「礼儀」「平常心」「慈悲の心」「忍耐力」「畏敬の念」など人としてあるべき礼節や精神を身につけることであると言われます。一見、非合理とも思えるこれらの文化や価値観は日本固有の大切な精神文化と言えるのかもしれませんね。★慌ただしく時間に追われる毎日ですが、お彼岸にはお墓参りをして自らを省みる時間を持ちたいものです。