「聖観音菩薩像修復③」
2023.11.30

今週に入ってからは時折、冷たい風も吹くようになっています。いよいよ冬の入り口に差し掛かっているようですね。★今年も残すところあと1ヶ月となり、早いもので明日からは師走を迎えます。師走という言葉は古くからあったとされ、すでに奈良時代や平安時代の文献には記載があったとあります。もともとは「とし(年)」が「はす(果てる)」などという意味で使われた言葉であったようですが、現在のように先生(僧侶)でさえ走り回る忙しい月という意味で使われるようになったのは江戸時代以降という説が有力だそうです。何かと慌ただしい昨今では「師」はもちろん、すべての人々にとって忙しい時期となります。風邪など引かぬよう、無事に師走を乗り切りたいものですね。★観音菩薩像の修復は加飾工程に入りました。画像は各部位に金箔を押して仮組みをした段階で撮影したものです。金箔は極めて薄いものなので、仕上がりを左右するのはその前の塗り工程の出来次第となります。すべての工程も同様で、一連の作業はすべて繋がっており見えない部分も手を抜くことはできません。師匠からは「途中で手を抜くと先で分かってしまうんだよね」と何度も教えられたことを今でも思い出します。このあと、眼入れ、宝冠金具、厨子の組立てとなり完成です。★松江は今日も雲の多い朝を迎えました。日中の気温もそれほど上がらない予報になっていますね。
「新嘗祭」
2023.11.20

山陰でも先週の後半から不安定な天候となり、週末には松江でも初雪が観測されました。11月上旬の夏日からわずか10日ほどで初雪が見られたのは意外でしたが、昨日は久し振りに気温も上昇して穏やかな一日になったようです。★鹿島町にある佐太神社では毎年11月20日から25日に「神在祭」が執り行われます。地元では「お忌(いみ)さん祭り」として親しまれていますね。神在祭では20日に「神迎神事」、23日に「新嘗祭」、25日に「神等去出神事」が斎行されます。23日の「新嘗祭(にいなめさい)」はその年の収穫に感謝して新穀を神前にお供えし、来年の豊穣を願う行事とされています。これは日本書紀にも登場する古くからの宮中祭祀で、現在は全国の神社でも執り行われます。この日は「勤労感謝の日」として広く知られていますが、戦前は「新嘗祭」と呼ばれる祝日だったそうです。大自然の恵みや生きることそのものに対する「感謝の日」と言えそうですね。★聖観音菩薩像の修理は下地と木地の補修が終わって、中塗りの最終段階になっています。画像は各部位を仮組みしたもので、まだ結合はしていません。心配していた右手と蓮華、両足の製作は順調に進み、ようやく完成時の様子がイメージ出来るようになりました。このあと丁寧に水研ぎを施し滑らかにしてから、仕上げ塗り、金箔押し、加飾となります。★今週の前半は日中の気温も持ち直して穏やかな天候になりそうな予報が出ていますね。
「仏壇クリーニング洗浄」
2023.11.10

11月に入ってからも気温は下がらず、かつて鼕行列が行われていた11月3日は松江でも25度を越える夏日となっていました。過去の鼕行列はみぞれの降る中で行われたこともあるそうなので、随分と暖かい秋となっているようです。古代中国で考案された「二十四節気」では四季の始まりは立春、立夏、立秋、立冬の四つで、暦の上では11月8日の「立冬」から冬となります。立冬は「秋が極まり冬の気配が立ち始める日」とされていますが、本当の冬はもうしばらく先になりそうですね。★今年も残すところ2ヶ月を切り、私たちの工房でも年末までに納入するお仏壇や仏具の修繕などの業務で慌ただしくなりました。画像はご自宅の建て替えの機会に合せ、お仏壇のクリーニング洗浄のご依頼でお預かりした「唐木仏壇」です。クリーニング洗浄の手順としては分解、洗浄(すす洗い)、木地補修、塗装、金具補修、背板・障子の張り替え、組立てとなります。今回は塗膜に傷みが見られるので、研ぎと塗装が中心になりそうです。納期は「塗り仏壇」よりもやや短く、1ヶ月程度で完成となります。様々な業務の同時進行となっていますが、順調に行けば予定通り年内には納入できると考えています。(画像はご依頼者様にご了解を頂き掲載しています)★今日の松江は小雨の降る朝を迎えています。週末を通して雲の多い天候になりそうですね。
「聖観音菩薩像修復②」
2023.10.30

暦の上では「霜降」を迎えて朝晩の気温は一段と低くなりました。二十四節気では秋の最後の節季になるので晩秋ということになります。この時期からは山々の木々が本格的に色づいて紅葉の見頃となりますね。古くからこの時期は一日の温度差が大きく徐々に気温も低くなることから、健康維持のためにも栄養価の高い食べ物をしっかり摂って寒い冬に備える頃とされます。「霜降」の次は「立冬」。いよいよ暖房器具の準備を始める時期になりますね。★観音菩薩像の修理は分解工程から木地の補修工程に入っています。部材ごとに膠(にかわ)で固定されているので、各部材をぬるま湯で溶かして分解します。熱湯で溶かす方法もありますが、早い技法である反面どうしても木地を傷めてしまいますので時間を掛けて分解します。このあと、水分を含ませながら丁寧に下研ぎを行ってから、木地調整、下地調整となります。この聖観音菩薩像はこれまでに修復された形跡はなく、宝冠の金具類と右手、左手の持物と思われる蓮華が欠損しているほかは、木地の状態を含めて極めて良好な状態でした。100年の歳月を遙かに超える時間を過ごしてきたことを考えると驚くばかりです。欠損部位は丁寧に造り直して後補したいと思います。★先週の後半は雷を伴った不安定な空模様でしたが、今週は秋晴れの見られる穏やかな天候になる予報になりました。