「神々の美術」
2024.05.10

好天に恵まれた大型連休が明けると上着なしでは外出できないほど気温が下がりました。今日は久しぶりに穏やかな一日になりそうですね。★松江市殿町にある松江歴史館では4月26日(金)から6月16日(日)までの予定で「企画展/神々の美術」が開催されています。普段、あまり目にすることのない出雲地方の神仏や仏像、神宝が多数展示されます。特に企画展ポスター中央の「木造十一面観世音菩薩立像」はぜひ見ておきたい仏像のひとつではないでしょうか。頭上に十一面の化仏が表され、左手に未開敷蓮華(みかいふれんげ)を挿した水瓶を持つ高さ141㎝の美しい観音像。1921年に行われた解体修理の際には「文永年間(1264~1274)」の墨書きが見つかっており、鎌倉時代の製作であると推察されています。奈良時代から平安時代に製作された仏像に比べると写実的で洗練された表情となっており、国の重要文化財にも指定されています。★この観音像が造られたとされる「文永年間」はどのような時代だったのでしょうか?天皇は亀山天皇から後宇多天皇、幕府の将軍は宗尊親王から惟康親王、執権は北条氏。歴史的には蒙古襲来の「文永の役」が起きた時代として知られています。展示されている十一面観世音菩薩立像が、幾度かの修復を受けたとはいえ気の遠くなるような時間を経た今、ほぼ当時のまの状態で鑑賞できることには驚くばかりです。★明日までは青空が広がりそうな予報になりました。気温も上昇しそうですね。
「初物」
2024.04.30

今日の松江はやや雲の多い朝となりました。大型連休を迎えてからは観光で松江を訪れる方も多くなっているようです。★先週後半あたりから気温も上昇して松江城周辺の木々は青々と色付いて初夏の気配が漂っています。「目には青葉 山ホトトギス 初鰹(山口素堂)」 江戸時代の俳句で詠まれたように季節が移り変わる情景は現在とそれほど違いがなかったのかもしれませんね。特にこの時期に取れる初鰹は脂身も少なく絶品とされ、古くから俳句の題材にもされてきました。江戸の人々は初物の鰹に熱狂し、初鰹の値段は高い時で一本金二両から金三両ほどであったとか。初物を好んだ江戸の庶民にとっても「初鰹」は高価なものであったはずですが、それでも平気で食するのが江戸っ子の粋であったようです。★鰹に限らず古来より「初物」は縁起が良く、初物を食べると七十五日ほど長生きすると言われてきました。由来は様々あるようですが、験担ぎの意味もあったのでしょうか。ご先祖様への供物も季節一番の米や初物の野菜で作ったお膳をお供えする習慣があったとされ、これもごく自然なことだったのかもしれませんね。初夏に吹く風も鮮やかな青葉も普段の暮らしの中の小さなことですが、季節の旬に出会ったようでなぜかありがたい気持ちになります。★連休の後半には天候も回復して行楽日和となりそうですね。
「蒔絵位牌」
2024.04.20

朝晩の冷え込みもなくなり暦では「穀雨」を迎えました。日中の気温も徐々に上昇しているようですね。★「穀雨」は「百穀を潤す春の雨」という意味で、「穀雨」の頃からは徐々に雨量が多くなるので植物の種を蒔いておくと成長の頃には雨に恵まれて順調に育つ時期とされています。田畑の準備が整う頃でもあり「穀雨」を目安に田植えを始める地域もあるそうです。自然の中で生きる草木にとっても活力がみなぎる恵みの季節と言えそうですね。★前回はお仏壇内部の季節の草木を表現した彫刻についての内容でしたが、お位牌にも季節の草花や鳥を描いたものがあります。お位牌は台座部分に梅などを透かし彫りにしたものや獅子や龍を彫ったものなど様々ですが、最近では画像のような季節の花の図柄を入れた「蒔絵(まきえ)位牌」も作られるようになりました。一般にはスッキリとしたモダン仏壇に合うようデザインされたお位牌が多いようです。桜をはじめ、朝顔や水仙、秋桜や桔梗などが蒔絵で加飾され、透明感のある美しい仕上がりとなっています。画像のお位牌の木地は紫檀材なので戒名入れは金蒔絵で入れるか、彫刻の場合は文字が明瞭になるように金を入れることになります。★今夜から明日にかけては雨の降る予報になっています。週明けまでは雲の多い天候になりそうですね。
「清明」
2024.04.10

暦の上では「清明」を迎えました。終日、穏やかな一日になりそうですね。★日本では四季の移り変わりが比較的はっきりしており、その変化は日本独自の文化を生んだと言われます。住居や食事などはもちろん、風習や芸術などに至るまで季節感は密接に関わり、世界でも類を見ない自然や風土を持つ国として知られています。さらに一年を二十四の節気、七十二の候に分ける暦の概念が加わり、その中で人々は情緒豊かな感性を育んできたとされています。「清明(清浄明潔)」は万物がけがれなく清らかで生き生きとして、花が咲き、鳥が歌う爽やかな季節。いよいよ過ごしやすい気候になりましたね。★お仏壇のデザインは大陸から伝わった仏教観と、日本が持つ独自の自然観が融合して成立したと考えられています。中央には須弥壇があり、周囲には草花や鳥などの彫刻が施されています。各家庭にお仏壇が広まったのは江戸時代からとされていますが、やはりご先祖様にも花が咲き、鳥が歌う穏やかな場所で過ごして欲しいという願いがあったのかもしれませんね。この度、修復でお預かりしたお仏壇の欄間や内陣にも季節を感じさせる草花や鳥などの繊細な彫刻が施されていました。丁寧に修復してからお返ししたいと思います。(画像はご依頼者様にご了解を頂き掲載しています)★早いもので玄関先ではツバメの姿も見られるようになっています。週末にかけては気温も上昇する予報になりました。