「春到来」
2025.03.10

今日の松江は穏やかな朝を迎えました。終日、雨の心配はなさそうですね。★早いもので、あと一週間ほどで春の彼岸入りとなります。私たちの工房でもお彼岸までの納品に間に合わせるため、この時期は早朝から準備を始めます。冬場ではまだ暗い時間帯ですが、冬至と夏至の中間を迎えるこの時期には夜明けが早くなっているのを実感します。画像は工房から東の空を撮影したもので、昨日は春の入り口を感じさせる澄み切った空を眺めることができました。お彼岸までもう一息、追い込みをかけたいと思います。★現在は時計があるので日の出の時間に関わらず仕事の準備を始めることができますが、昔の人々はどのように時間を計っていたのでしょうか?不思議ですね。実は、江戸時代の人々は日の出の「明け六つ」になると働き始め、日没の「暮れ六つ」になると休むという暮らしだったようです。単に日が昇れば「昼」で、日が沈めば「夜」という感覚ですね。昼の時間の長い夏場には長時間働いて、昼の時間の短い冬場には短時間働くということになります。1分1秒を正確に刻む現代の感覚では想像することさえできませんが、正確な時計もなく、照明器具も限られていた時代ではごく自然なことだったのかもしれませんね。★今週は週末にかけて雲の多い日が続きそうですが、気温は徐々に上昇する予報になりました。
「開花」
2025.02.20

先週末に回復していた天候も週明けから不安定になり、再び雪も降り始めています。今週は路面に残る雪にも注意が必要ですね。★暦の上では「雨水」を迎えました。例年のこの時期は松江城椿谷の梅もほどよく咲いている頃ですが、今年は気温も低く空気も乾燥しているせいでしょうか、随分と遅い開花となったようです。昨日の椿谷では凍るような寒さの中で、数本の枝先に小さな梅の蕾がほころびはじめていました。いつもながら雪の中で静かに咲く凛とした佇まいには揺るぎない強さを感じます。禅僧が弟子の修行中の姿を雪中に咲く梅の花になぞらえて詠んだ句や、いにしえの人々が梅の花に魅了されて詠んだ歌が数多く残されているのも梅の花が人々に慕われてきた証と言えそうですね。「雪の色を 奪いて咲ける梅の花 今盛りなり 見む人もがも/万葉集 大伴旅人」 (雪の白さを奪って咲く梅の花は今が盛り 見る人があってほしいものだ) ★週末にかけてはまだ雪雲が残りそうですが、来週の後半からは気温も上昇する予報になりました。いよいよ春の足音が聞こえてきそうですね。
「寒冬」
2025.02.10

先週末からは一気に冬型の天候になり、全国的に悪天候となっていたようです。昨日は松江城周辺も一面の雪景色となっていました。★家の中では暖房器具のおかげで温かく過ごすことができますが、戸外に出れば厳しい自然の中。これは今も昔も変わらないような気がしますね。現代のような電気やガスの無かった時代の人々はどのように暖を取っていたのでしょうか? 江戸時代は北半球を中心に小氷期と呼ばれる寒冷な時代だったようで、現在の気候よりもさらに気温が低かったそうです。★そんな暮らしの中で暖を取る方法としては「火鉢」が一般的に用いられていたようです。火鉢には金属製、木製、あるいは陶器製などのものがあり、中に灰を入れその上で炭や炭団(たどん)などを燃やして使用します。形状や大きさは違いますが、仏具で用いる香炉と共通点があるのは興味深いですね。また、火鉢とともに利用されたのが炬燵(こたつ)だったようです。室町時代にはすでに炬燵が用いられており、囲炉裏(いろり)の上に櫓を組んでそこに布を被せて暖を取る方法が原形で、江戸時代には囲炉裏を床より一段下げ、その上に櫓を組み布団を掛ける「掘炬燵」が登場しています。日常生活ではさらに着物を重ねて着るなど工夫をして厳しい寒さを凌いでいたようですね。★雪の峠は越えたようですが早朝には気温も下がる予報になっています。路面凍結などには十分注意しなければなりませんね。
「立春」
2025.01.30

今日の松江は肌寒い朝を迎えました。日中の気温もそれほど上がりそうにない予報ですね。★早いもので1月もあと僅かとなり、週明けにはいよいよ「立春」を迎えます。旧暦では立春が一年の始まりとされ「八十八夜」あるいは「二百十日」なども立春を起点に数えた日として定められています。寒さの中で梅が咲き始め、草木の営みにも季節の移ろいを感じるようになる頃ですね。立春の前日の「節分」には邪鬼をはらう「豆まき」なども多くのご家庭で行われるのではないでしょうか。★毎年、この時期になると一年間使用する道具類の手入れをします。画像の蒔絵筆は仏具職人には欠かせない道具のひとつで、漆で仏具へ銘を書き入れたり絵柄を書いたり、お位牌の戒名を書き入れる時などにも使用します。今回は左2本の筆の竹筒部に絹糸を巻いて漆で固めて強度を確保する作業を行います。右側2本は「イタチ」の毛を使用した筆、左2本は「ネズミ」の毛を使用した筆です。イタチの毛の筆は適度に腰と粘りがあり、私は好んで使用しています。一方、ネズミの毛は漆との相性が良く、滑らかな線を描くのに適しています。蒔絵筆の穂先は非常に細く繊細なので慎重に取り扱い、さらに使用後は油に浸して乾くことのないよう厳重に管理します。これらの筆類は大量生産されていないので大切にしなければなりませんね。★立春とは言えまだまだ寒い日が続きます。体調管理には留意して暖かな春を迎えたいものです。