「位牌の修理③」
2023.06.30

梅雨らしい天候が続いていますね。近くの寺院の境内の紫陽花も清涼感のある色合いで咲き誇っていました。★早いもので今日はいよいよ一年の折り返し。この半年間は時間に追われるばかりで慌ただしく過ぎ去ってしまったような気がします。年々、加速度的に早くなるのかもしれませんね。それでも半年を振り返ると良いこともありましたが、反省しなければならないと感じたこともありました。明日からは後半に向けて、心機一転で新たなスタートを切りたいと思います。古くから旧暦の6月30日には「夏越(なごし)の祓(はらえ)」と呼ばれる神事が執り行われていたそうです。これは1年の半分の区切りとなる日に、心身の穢れや災厄の原因となる罪を祓い清める儀式で「六月の祓」とも呼ばれます。明日からはすべての人々にとって一年の後半に向けた新たな出発と言えそうですね。★お位牌の修理は金箔押しが完了し、仮組みしたところです。これが十分に乾けば正式に組み上げとなります。金箔の仕上がりは塗りの完成度と大いに関連しているので、金箔を押す(貼る)前の塗り工程、あるいはその前の下地の工程が重要になります。どの工程でも目に見えない部分に手間を掛けることが要点と言えそうですね。ご依頼者様にとっては長年大切に祀られてきたご先祖様のお位牌。最後まで気を抜かず丁寧に仕上げたいと思います。
「位牌の修理②」
2023.06.20

松江では先週末から好天が続いています。全国的にも夏日となる地域が多くなっているようですね。★暦は移り、明日はいよいよ「夏至」。北半球では1年で最も昼の時間が長い日となり、夏の入り口を思わせる季節の到来です。4月の終わり頃にやってきたツバメが雛を孵してからは軒先が随分と賑やかでしたが、夏至を迎える前にすべて巣立って行きました。我が家では例年のように「夏至」のタイミングでツバメの巣が空っぽになります。元気に成長したことでホッとする反面、少しだけ寂しさを感じますね。来年もまた来てほしいものです。★位牌の修理は塗りの行程に入りました。全体を研ぎ、下塗り、中塗りを施し最後に仕上げ塗りで完成です。刷毛塗りをする場合は、あくまでも薄く塗り、彫刻部分の凹凸が埋まらぬよう注意します。彫刻部分の塗りの薄さと仕上がりの強度は相反する課題なので見極めが非常に難しく、長年やっていても難しいと感じます。師匠からはこの「塗り」の基本行程を厳しく教えられましたが、今でも昨日の事のように鮮やかに思い出します。このあと、水研ぎ、仕上げ塗り、最後に金箔を押して完成となります。★明日からは梅雨の空模様に戻る予報になりました。気温は上昇しそうなので、体調管理や食品管理などに注意したい天候になりそうですね。
「位牌の修理①」
2023.06.10

今日の松江は朝から青空が広がりました。日中の気温も上昇しそうですね。★暦の上では「芒種(ぼうしゅ)」を迎えています。芒種は二十四節気の一つで、江戸時代の暦の解説書には「芒(のぎ)のある穀類、稼種する時なり」と記されています。「芒」とは稲などの穂先の針のような突起物を指し、古くから「芒」のある穀物の種を蒔く(植える)時期とされていたようです。「芒」のあるイネ科の植物の種子が成熟して実る頃だとする見方もあるそうですが、現在では「梅雨入りの頃」というイメージが強いですね。★私たちの工房ではお盆の準備の期間を中心に、仏具やお位牌の修理を続けています。時折、珍しいお位牌をお預かりすることがありますが、画像のお位牌も今ではすっかり見なくなった形状で、年月日の記録から約85年前に作られたとものと推測されます。比較的傷みは少なく、大切に安置されていたことが分かります。何処の工房で造られたお位牌なのか分かりませんが、丁寧な職人の手仕事に依るものと思われます。細部の彫刻は深く丹念で、塗りは今でも十分な強度を保持しており、当時の職人の気概が伝わってくるようですね。今回は金箔が剥落しているので、固着を優先して塗り替えと箔押しの手順で進めることにしました。(画像はご依頼者様のご了解を頂き掲載しています)
「梅雨入り」
2023.05.30

昨日は山陰地方も梅雨入りの発表がありました。今日も引き続きすっきりしない空模様になりそうですね。★昨日通り掛かった浜佐田地区の水田では田植えも随分進んでいるようでした。台風の時期までにはしっかり根付いてほしいものです。この地区は佐陀川周辺に位置していますので、江戸時代の開削工事のあと開発された水田になるようです。この時の治水、灌漑工事により安定的に田畑に水を供給することが可能になり収穫量も向上したとされています。米を主食とする人々にとって治水、灌漑工事は欠かすことのできない事業だったと言えそうですね。★そもそも灌漑農業はいつ頃から始まったのでしょうか?灌漑農業の起源は本当に古いようで、紀元前5500年頃、チグリス川とユーフラテス川流域やナイル川流域のエジプトで始まったとされています。人々は水を求めて自然と大河のある付近に集まり、定期的な増水を管理して灌漑農業が行われるようになったとされています。また、農業を効率化するために「暦」も発明されました。それでも大自然の現象をすべて予測することは困難で、自然と神々への祈りと結びつくようになったのではないかと考えられます。秋になると世界各地で収穫祭などが行われ、日本でもその年の新穀を神前に奉納し新嘗祭(感謝祭)が営まれます。★今週は概ね不安定な天候になりそうです。明日は一時的に晴れ間の見える予報になっていますね。